2023/02/02

【No.59】企業にとって身近な存在になるためにはどうするか、ユーザ企業に伴走するということは何か?

あきたDX通信編集長 伊嶋謙二

今回はあきたDX通信の編集長が、以前日経BPに連載していた原稿を紹介します。

本来のSI(システムインテグレーター)とはかくあるべし、特に中小企業へのSI企業とはどうあるべきかという規範的な企業が同社であるのは間違いありません。当時の原稿に若干書き直しや編集をしていますが、本質は変わっていないので、お読みいただき参考にして頂ければ幸いです。
https://active.nikkeibp.co.jp/article/Active/20120914/422928/

また2020年以降オンプレからクラウドサービスへ、保有から利用へとITなどの購入形態や活用方法は大きく変化していますが、SI企業として、中小企業へITやDXをいかに提案して、ユーザ企業を支援していくかという点については、過去から現在までいささかも変わることの無い信念でビジネスを展開しているのが大塚商会です。

「大塚商会の中堅・中小企業ビジネス成功の理由」
大塚商会はなぜ中堅・中小企業にこだわるのか。ここがまず大きなポイントになる点だ。「同社は、中堅・中小企業市場で圧倒的な存在感を誇る販売店、SI企業である。」このことは言うまでもない事実であるが、その本当のすごさについて、いまひとつ正しく理解されているとは思えない。

同社のすごさは、中小企業ビジネスのための特効薬的な決め手が無いと言われる中で、長期的な継続力と変わらぬ顧客への対応力、そして不断のITへの取り組み姿勢が果たせた実績である。一般的に言われている「販売力が強い」ことは間違いないとしても、その販売力を支える同社の戦略は、とてもシンプルだがなかなか他社が容易に継続し、かつ実践しにくいものだ。

「中堅・中小企業市場で直販、訪問販売のビジネスを成立させる」
同社の主な顧客は中堅・中小企業であり、別の市場から新規に中堅・中小企業市場を攻略してきたわけではない。退路を断って、この層の顧客と一体となってビジネスを展開してきた。

 では、なぜ大塚商会だけが中堅・中小企業市場で、ビジネスを成立させているのだろうか。
同社を特徴付ける5つの戦略ポイント、キーワードがある。

 1.徹底してエリアを区切ったメッシュな訪問販売
 2.すべての製品は自営保守を行う(自前の保守サポート)
 3.オールフロントによるワンストップ主義(多能工で一人でサポートする)
 4.ユーザ企業にクロスセル(関連商品でユーザの欲しいものを提案)、
  アップセル(上位商品の提案)を実現するCRMを実現
 5.圧倒的な数の新規顧客を取り込むネット通販「たのめーる」

「身近な存在」であることが顧客に選ばれる理由に
 強さは営業力だけではない。それ以外にも、他のベンダーに出来ないことがある。同社には、"真のマルチベンダー"という大きな特徴がある。マルチベンダーと言いながら、自社製品あるいは特定商品の販売に注力するベンダーが多い中、同社は顧客のニーズに合ったものをマルチベンダーで提供する。

 商品の品揃えも充実しており、顧客が必要とするものをすべて提供する。他社では、サーバーとその派生商品、あるいは複写機とその派生商品というように、取扱商品を限定していることが多い。

 IT関連の商品だけではなく、ビジネスデスク、椅子、棚などのいわゆる什(じゅう)器、文具、電球、そしてお茶やお菓子などまで、オフィスに関連する全てのものの販売とサービスサポートを、ワンストップサービスで提供する。中堅・中小企業だけではなく、SOHO/零細/個人事業主にも対応できる。ここにも同社の強さがある。

 別の言い方をすれば、あえて顧客のニーズに合わせなくても、さまざまなニーズに応えられるだけの商材を用意しておけば、顧客は選択しやすくなる。同社は「ITの百貨店」「街の電気屋さん」という言い方がされることがある。中堅・中小企業にとって極めて身近な存在であろうとしているところが、自然でありながら戦略的ということが分かる。

独自CRMとiPadの活用で究極のクロスセルを実践
 かつてITは飛び込み営業や新規開拓路線と言われてなりたくない職種のひとつだったが、同社は営業スタイルを既存顧客深耕型へと転換させることになった。社員の定着という意味でも効果があったはずだ。そのきっかけが、同社独自に開発したCRM(顧客関係管理)システム、「SPR(Sales Process Re-engineering)」である。SPRは、営業員の生産効率を向上させるためのシステムである。顧客の状況と営業の進捗状況を把握できる。

 SPRは、顧客に関する同社独自のCRMシステムである。顧客の企業属性はもちろんのこと、すべての購入履歴から、商談のステータス管理、競合他社の導入状況など、営業マンがエリアで提案活動をするために必要となる詳細情報が、ほぼデイリーで入力管理されている。しかも、社員であれば誰でも閲覧できる。

 販売するための情報だけでなく、営業員ごとの営業目標の達成状況、競合案件での負けの状況など、マーケティングやBI(ビジネスインテリジェンス)的な活用も可能になっている。従来までの効率の悪い飛び込み主体のローラー営業を、有望な顧客に対する提案活動に切り替える。その際、SPRはクロスセルのための極めつけの顧客データベースとなる。

 さらにSPRは地図ソフトと連携して、地図上で顧客企業の位置を確認できる。近くの顧客の情報や何を提案すべきかまでをiPadから確認して、ついでに立ち寄れるようになり、営業効率は上がった。(10年以上前から行っていた!)

iPadの導入は営業支援だけでなく、iPad自体の販売や営業システムの提案にも繋げている。iPadで営業するノウハウを直接顧客に見せることで、顧客にもiPadを提案する。スマートデバイスの導入には、セキュリティ、認証、コンテンツの自動ダウンロードなどのノウハウがある。そのノウハウは、同社にとって今後十分に商材となり得る。

大塚商会に懸念材料がまったく無いわけではない。
当時の指摘されていた課題の1つは複写機事業がコスト削減、ドキュメントの電子化により、縮小の方向に進んでいることだ。電子化ソリューションでのドキュメント関連商品の伸びは考えられるが、複写機自体の減少をどこで埋めていくのかは課題だろう。
 2つめの課題はクラウド化への対応だ。同社はクラウドという名称のサービスは提供していない(当時の話)。「たよれーる」にはクラウドと呼ばれてもおかしくないサービスがあるが、同社はあえてクラウドの名称を使わない。「たよれーる」はあくまで、同社が直接サポートする従来からのサービスの延長線上にあるという位置付けである。この点、売り手の都合による「クラウドサービス」ではなく、顧客目線で役立つサービスを提供するという基本姿勢を変えないことの表れとも言える。

 ハードやサプライなどの実際のモノがあるビジネスから、ソフトやサービスなどの形のないビジネスへシフトしつつある。売上の内容はハードのビジネスが一定規模の割合を占めている。それだけに、市場の大きな潮流にきちんと対応できるか、そして現状のような高い生産性と収益を維持できるかどうかがポイントとなるだろう。】

以上が、同社について、以前書いたもののダイジェストであるが、今なおこの感想は変わることはない。企業の身近にいることを実践することはどれだけ顧客の目線で見ているか、実践しているか、提案し続けているかという点である。この点は、SI企業などの業種に関わらず、ビジネスとしての信念やポリシーに関わるポイントとしていろんな企業などに共通する要素であることが分かります。

現在では、同社はクラウドサービスへの大転換を遂げながらも、主要顧客である、中小企業へのSIビジネスは変わらず王道を進んでいるのが、大塚商会です。

自らIT,クラウド、DXを実践しながら、中小企業へ提案して、身近にいて、伴走するということの模範を示すこの事例はシンプルだけど、やり続けていくビジネススピリットは大いに参考になりますね。
さて読者の皆さんはいかがでしょうか?

次回は編集部からのトークをバトルでいくね。お楽しみに!

どうするスキー場

冬に雪はつきもの?3回目登場の榊田です。

秋田に暮らしていると冬に雪は必要?なものです。
雪は美しく楽しいものになるのですが、降り過ぎるとやっかいなモノになってしまいます。
ちょうど1月末の原稿締め切りでしたので、雪と楽しむ!でウィンタースポーツとデジタルについて書いてみます。

ウィンタースポーツと言えば、スキーやボードですが、愛好者は年々少なくなり、全盛期
(1998年1,800万人)のたった3割に減少しているとのこと。減った理由はいろいろあると思いますが、
どうしたら増えるのか?減らないのか?今シーズンはコロナからの脱却のはずが・・・
燃料費高騰でリフト代、食事代が上がって・・・さてさて、"どうするスキー場?"

 1.スキー&ボードの課題
  ・レジャーの多様性 バブル期みたいに"冬はスキー"という時代ではないのかもしれませんね。
  ・スキー&ボードに係る費用の高騰:まずは道具、着るもの、スキー場の利用料
   (リフト券、食事代、レンタル代)
  ・スキー場の減少、縮小(近場が無くなった?)
  ・魅力的なスキー場の減少???
   (今生き残っている魅力的スキー場とは、①バックカントリーコースがある、②樹氷がある、
    ③温泉がある、④雪質がいい・豊富である、⑤知名度が高い、⑥アクセスがいい・・・)
   ※一部スキー場では、"あぐらをかいた経営で・・・温泉街が廃墟街?

 2.スキー場経営の苦悩と闇
  ・お客が少なければ売上は伸びない!
  ・売上が伸びないと設備の縮小や人員削減!
  ・リフト係員が減ると無賃乗車の横行。収入減!(結構あるそうです)
  ・リフト係員が減ると運転リフトの減少。スキー場としての魅力現象!
  ・リフト係員が減ると安全面で問題が
  ・厨房係が減るとメニューが減少、単価高騰。食事の魅力減!
  ・食事代が高いと持ち込み客増大!(気持ちはわかるけど・・・)

 3.集客が見込めるコンテンツ
  ・今までとは違う魅力が必要 様々な愛好者向けのコース設定
   (オフピステ、フリースタイル、モーグル他)
  ・樹氷観光(場所が限られますが)
  ・温泉施設(これは是非!)
  ・地元食材の料理(以外と知られていない?どこでも同じゲレ食はNG?)
  ・イベント(〇〇祭や△△セレモニー)
  ・外部コンテンツ(〇〇全国大会、World Cup、タレント・・・)

 4.デジタル技術を使った改善策案?
  ①スキー場スマホアプリの新規作成
   スキー場で利用するサービス
   (レンタル、スクール、リフト券、食事、温泉等々)を全てアプリで!
   リフト券では乗った分だけ(課金上限はもちろん必要ですが)、
   食事は食べた分だけ、レンタルも・・・
   キャッシュレスすればスキー場で現金は使わなくなります。
   もちろんレンタルやスクールの予約もアプリから。 
  ②レストラン
   ・人手による食券販売→スマホで注文、決裁、受付番号表示で受取
   ・注文が厨房に繋がっていれば自動で厨房担当に指示
    →さらにスマホから食事をオーダーしたり支払いができたり
  ③ゲート式リフト券の活用
   ・いくつかのスキー場で採用されていますが、リフト券にIDが入っていて
    各リフト乗り場のセンサーゲートを通過することで、リフト券の確認ができるものです。
    これとアプリを連動して・・・
   ・リフト券の利用確認人員の削減と不正乗車を防ぐことができます・・・売上増?
  ④HP、SNS、カメラ等による情報発信
   ・情報発信のための組織作りや専門担当者(できれば若い方担当者で) 
   ・ライブカメラは情報発信に有効(YouTube Live等の活用)

 5.期待される効果
  ①利用者には
   ・アプリで全てが完結!
   ・毎日の最新情報、スキー場の状況やお得情報がコマメにプッシュ通知されます。
    (その気になる?)
   ・ヘビーユーザのシーズン券利用者には来場回数に応じてポイント発行して賞品等
    (来場回数ランキングや滑走本数・距離数ランキングなんかも面白い?)
   ・キャッシュレスによるスムースな会計、待つことはありません!
   ・使った分だけ清算で無駄遣いが減ります!
   ・リピート来場で特典、お得に利用、ポイントゲットで更にお得に!
     定期的なイベントや抽選等への参加
   ・オフシーズンのスキー場イベントへのお誘い!
  ②経営側には
   ・アプリ利用で、顧客の利用状況確認(来場頻度や乗車回数等)ができます。
   ・アプリの外国語対応でインバウンド客を期待!
   ・リピータ獲得のための宣伝広告ができます。
   ・来れば来るほど"お得になる!"ような仕掛けをすれば、囲い込みができます。
   ・キャッシュレス・情報のシームレスによる人員の再配置が可能に!
   ・魅力度UPでリピータが増えていきます!
   ・無賃乗車が減り、未回収防止に繋がります!
   ・魅力的なメニューによりレンストラン収入アップ!
   ・データによって裏付けられる状況から、次の集客対策や設備投資計画立案、
    改善提案が可能となります!

 6.ただし・・・資金面では?
  ・やる気のあるスキー場には施設拡充のための補助金は必須です!
   今デジタル化を進めないと他県に完全に差をつけられてしまいます。
  ・雇用を維持するための助成金も必要!雇用が無ければ、人口流出にも繋がります!
  ・イベント開催に補助金
  ・外国人誘客のための支援(外国人向けのコンテンツ充実、看板やアプリ外国語対応)
   たのみは外国人来場者。外国人はほとんどキャッシュレスです。

どこかやってくれないかなぁ・・・

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あきたDX通信>>>>> 編集長 伊嶋謙二 /// 編集スタッフ 伊藤真弓 /// 主幹:鈴木守 /// エイデイケイ富士システム株式会社 DXセンター

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