2025/07/31

【No.122】自治体マーケティングのパイオニア流山市──秋田県の挑戦と重ねて見えること

※MA:マーケティングアドバイザー かわもと部長:次代のホープとされる今風の営業部長
真弓課長:企画部のやり手マネージャー兼SE

MA
今日はちょっと、自分のホームタウン、千葉県流山市について話したい。もう20年以上前から住んでいるけど、いまも人口が右肩上がり、住宅資産価値も高止まり、そして子育て世代が住み続けたいと自ら語る街と注目されているんだよ。
かわもと部長
流山って、確かTX(つくばエクスプレス)の沿線ですよね?20年くらい前に乗ったときは、駅周辺がまだ更地が多かったのを覚えてます。
真弓課長
私も最近知ったんですけど、子育て世代に人気らしいですね。「母になるなら、流山市。」ってキャッチコピーがSNSでも話題になってたとか。
MA
そう。流山市は2003年に都市計画のプロだった今の流山市長が就任してから、市役所にマーケティング課を立ち上げた。日本の自治体でその時点でそんな部署を持っていたのは、流山市だけだったんだよ。
かわもと部長
当時の行政でマーケティングって、かなり先を行ってますね。
MA
いや、先を行ったというより、「マーケティング視点なしに選ばれる自治体はない」ということを20年以上前から理解していたということだね。TXという交通インフラが整ったからこそ、マーケティングを土台に誰に選ばれる街にするかを構想できた。つまり、手段だけあってもビジョンがなければ成立しないってことだね。
真弓課長
確かに、TXという交通インフラだけではここまでの成長はなかったかもしれませんね。そこに誰を呼び込むか、どう価値を感じさせるかがセットだったということですね。
MA
その通り。流山市は明確にターゲットを「共働き子育て世代」に絞った。そのうえで、保育園をその当時の4倍に増やし、駅で子どもを預けられる送迎ステーションを設置。生活動線に支援を組み込んだ。そして戦略的に広告を首都圏に打った。
かわもと部長
かなりの時間をかけて、着実に作り込んでますね。
MA
マーケティング的にいえば、ブランドとは「一瞬で伝わる価値」だけど、それを形にするには長い積み上げが必要なんだよ。
真弓課長
今、関連資料を見たんですけど、「グリーンチェーン戦略」も興味深いですね。緑化基準をクリアしたマンションの資産価値が非認定より平均約500万円以上も高い(2019年当時資料)というのは、環境と資産価値が連動する好例ですよね。
MA
まさに環境政策を市場価値に変えた事例だね。最近の調査でも市民の8割が「住み続けたい」と回答している。これも、価値を正しく届けた結果だ。さて、ここからが本題だが、秋田でも今年、新知事が誕生し、そして秋田県庁にマーケティング部門が新設されたと発表されてるね。実は、今の流山市長はSNSで先ごろの知事選で現秋田知事の強い推し活動もしていたこともあって、今回のテーマのマーケティングつながりがありそうで興味深い。
かわもと部長
なるほど、なるほど。
MA
枠組みを作ったのであとは「中身」だね。流山にはTXという強力な首都圏からのアクセスインフラがあった。秋田には何があるかだね。
真弓課長
そう考えると、秋田も強みの再定義が必要ですね。自然、文化、人材、子育て環境、たくさんの素材があるけれど、それをどう意味づけていくかが問われますね。
MA
その通り。そして、それを言語化し、外に届けていく。そういう意味では、その具体策が、我々のこの「あきたDX通信」だね。この発信自体が、秋田のマーケティング戦略の一部として位置づけられているという気持ちだね。
かわもと部長
なるほど、今やっていることの意味がよく分かってきました。僕ら自身が、秋田の語り部であり、設計者でもあるってことですかねー。
MA
そうだね。そして、これは行政だけの仕事でも、民間だけの取り組みでもない。誰と一緒に未来をつくるかが問われる時代だ。だからこそ、流山市のように市民や企業、行政が戦略に参加する構造を、秋田も構築できるかがカギになるだろうね。
真弓課長
今から10年後に「秋田に来てよかった」と思ってもらえるような街づくりができるかどうか、ですね。DXをベースにした働き方改革の実践としての我々のSemboku Workplexもその端的なアクションですものね。
かわもと部長
選ばれる地域には、必ず選ばれる理由がある、ですね。
MA
結局、ブランディングもDXも、目指すのは選ばれる地域をつくること。そのためには「誰に来てほしいか」を明確にし、その人の人生に寄り添う価値を提供できるかどうかだね。
かわもと部長
そうですね。個人的には「秋田に仕事があるから戻ってきた」よりも、「秋田で暮らしたかったから仕事を探した」というストーリーの方が、よっぽど強いと思います。
MA
流山は、その「暮らしたい」理由を、行政・企業・市民が一緒になってつくってきた。それは、むしろ秋田のような環境こそ、真のブランディングの余地があるんじゃないかなと痛感するね。

---編集後記---

真弓課長
「都市ブランディング」というと、派手なキャンペーンを想像しがちですが、実は「暮らす人の体験の質を丁寧に整えること」そのもの。DXもまた、デジタルで人の暮らしを支える営み。秋田が変わるヒントは、流山の事例のように、すぐ身近にあるのかもしれません。しかし一発で効果のある特効薬はなく、地道に続けることが肝心ですね。

※参考資料
なぜ千葉県流山市は、資産価値の下がらない街づくりと子育て世代のブランディングに成功したのか?- 日本を変える 創生する未来「人」その7 - WirelessWire News(MAがインタビュー)

ちなみに流山市の2025年7月1日現在の人口は214,416人で、世帯数は92,236世帯。MAが都心から移り住んだ2000年は150,527人でした。

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営業スタッフ徒然草

日本DX大賞2025

皆さまこんにちは。エイデイケイ富士システムの信太です。
先日、日本DX大賞実行委員会主催の「日本DX大賞2025」受賞者が発表されました。本大会は、デジタル技術を活用した地域や組織の優れた変革事例を収集・表彰・共有することで日本全体のDX推進を加速することを目指しており、今年で4回目の開催となります。
大きなシステム導入や難しいITではなく、身近な困りごとを現場からコツコツと変えていく。そんな「ちょうどいいDX」が実を結び始めています。

受賞事例をいくつかご紹介します。

【山形市×TXP Medical株式会社:「いのちを救う救急DX」で搬送困難を解消】
・内容
救急隊と医療機関をタブレットでリアルタイム接続し、患者のバイタル情報や病歴共有を実現。
搬送先決定までの時間短縮と迅速な治療開始へつながる取り組みです。

・成果
搬送時間の短縮、照会回数の減少、市民への医療提供スピードが向上。
・評価理由
救急搬送困難事案という社会課題に対し、文化やKPIの異なる消防・医療・行政の3者を連携させる情報共有プラットフォームを構築。市民の命を救うという直接的な価値創出と、全国へ展開可能なモデルを確立した点、および「救急現場」が起点となるDXにより、命を救う自治体の現場運営が変わる姿が高く評価されました。


【都城市:「Dに頼り過ぎない庁内DX」】
・内容
「アナログ業務の再設計」からDXを始め、電子化に頼らず業務フローの抜本再構築を実行。
・成果
市民の待ち時間や職員の残業時間を大幅に削減。
・評価理由
デジタルではなく人的・業務構造から見直す"フロントヤード改革"の徹底が高く評価されました。


【福岡市+LINEヤフー:「屋台DX」で地域文化を再活性化】
・内容
生成AIチャットボット「AIおいちゃん」、IoT電球による屋台の営業情報可視化など、地域文化をデジタルで補完する取り組み。
・成果
LINE公式「FUKUOKA GUIDE」友だち数:43,000人以上、利用回数:約218,000回
・評価理由
地域の屋台というアナログな文化的資源を行政DXに取り込んだ企画力と遊び心のある親しみやすいUIが評価されました。


これらの取り組みに共通しているのは、「現場の声をきっかけに小さく始めること」(スモールスタート)です。 大きな予算や難しいツールがなくても、身近な課題に寄り添って、ちょっとした工夫を積み重ねていくことが成功のカギになっているようです。共通点は「小さく始めて、ちゃんと続ける」ことでしょうか。

「DX=最先端のテクノロジー」と思われがちですが、今回ご紹介した事例を見ると、"人にやさしい"DXが、成果をあげているようです。
 1. 無理にシステムを導入しない
 2. 現場の困りごとに寄り添う
 3. 小さく始めて、みんなで育てる

そんなDXが、これからのスタンダードになるかもしれません。

「日本DX大賞2025」で紹介された自治体の取り組みは、どれも人や現場の困りごとに、そっと寄り添うようなDXでした。「最新技術を導入しよう」と気負うのではなく、「まず、いま目の前の課題をどうしたらよくできるだろう」と、小さな気づきから始まった工夫ばかりです。
たとえ大きなシステムがなくても、ちょっとしたアイデアと、現場へのまなざしがあれば、社会を動かせるのだと改めて感じさせてくれます。

難しい言葉や仕組みよりも、「誰のために」「何のために」変えるのか。そうした想いに根ざしたDXが、結果として大きな成果を生んでいます。

DXは、行政だけでも、民間だけでもうまくいかないと言われています。 だからこそ、お互いに歩み寄りながら、現場のリアルな課題に一緒に向き合うことがとても大切だと思っています。

私たちも、そんな姿勢を大切にしています。
「すごいことをやる」のではなく、「ちょっとよくする」を積み重ねる。
お客様と同じ目線で、一緒に悩んで、一緒に進んでいく。そんな「伴走型の支援」をこれからも大事にしていきたいと考えています。

業務のちょっとしたムダ、
非効率な手続き、
紙のやりとりが大変...

そんな身近なお困りごとからでも大丈夫です。
「こんなこと相談していいのかな?」と思うようなことでも、お気軽にお声かけください。
私たちは、「無理なく続けられる"ちょうどいいDX"」を、一緒に考え、一緒につくっていきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
弊社はシステムのスクラッチ開発から様々なハードウェアやソフトウェア、DX関連、伴走支援についてのご相談を承っております。



<問い合わせ先>
エイデイケイ富士システム(株)
DXセンター DX担当までお申し付けください。
TEL:018-838-1173

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あきたDX通信>>>>> 編集長 伊嶋謙二 /// 編集スタッフ 伊藤真弓 澤田亜弓 /// 主幹:五十嵐健 /// エイデイケイ富士システム株式会社

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