2025/08/21

【No.123】DX推進と人材育成 ― どうやって折り合いをつけるのか?

※MA:マーケティングアドバイザー かわもと部長:次代のホープとされる今風の営業部長
真弓課長:企画部のやり手マネージャー兼SE

真弓課長
暑い夏が終わった、とは言えない気候ですね。お二人とも元気ですか?
かわもと部長
まあまあですよ、でも異常気象だよね、本当に。秋田も日本も、そして世界情勢までもがヒートアップしていて、なかなか落ち着きませんね。
真弓課長
そういえば、お盆明けのこの時期といえば、毎年恒例の秋田県内調査の分析結果がそろそろまとまる頃じゃないですか?分析は進んでますか、もう終わりましたか?(※注1)(※注2)
MA
その通り、ほぼ終わりましたよ。暑いので、むしろ部屋にこもって、じっくり調査結果に向き合う時間がとれたよ、はは。
かわもと部長
まだ公式発表前なので詳しくは言えないと思いますが、せめてポイントのさわりだけでも教えてくださいよ。
MA
前回の調査から見えていたのは、秋田県内企業がDXや最新IT技術に強い関心を持ち始めていること。特に生成AIの認知度や利用率の伸びは目覚ましいね。3年前には考えられなかったスピード感だと思う。
かわもと部長
確かに営業の現場でも「AIで業務を効率化できないか?」という相談は増えている。ただ同時に「対応できる人材がいない」という声も強い。今回の調査でも、DXに取り組まない理由のトップが「人材不足」だったのかどうか、そこが気になりますね。
真弓課長
そうそう。前回の調査で、IT人材が「不足している」と答えた企業は、たしか約6割でしたよね。ここ数年大きな変化がない。つまり解決の糸口がまだ見えていないってことですよね。
MA
そう。「IT人材の過不足感」のデータでも、不足感を抱えたまま解決策を打てずにいる姿が浮かび上がるよね。さらに「今後のIT人材の増員見通し」で最も多かったのが「分からない」だった。これは不安の表れだと思う。
かわもと部長
「分からない」が多いのは、採用も教育も先行き不透明だからでしょうね。求人市場の鈍さもあるけど、どんな人材をどう育てればいいか、社内で議論がまとまらない企業が多いのだと思います。
真弓課長
しかも外部に頼ろうにも、身近に相談できる専門家やパートナーがいない。結果として「DXを進めたいけど進められない」という堂々巡り。中小企業にとっては特に深刻なボトルネックですね。
MA
加えて「今後のDX展望」で「全社的に取り組む」「社内人材を育成する」と答えた割合がどうかも注目点だね。つまり企業が方向性を見失っていないかどうか。
かわもと部長
人材育成を「実行」に移せているかが問題ですね。調査でも「すでに実施している」企業は少数派で、多くは「機会があれば参加させたい」にとどまっている。やる気はあっても行動に結びつかない。
真弓課長
でも裏を返せば、教育機会や仕組みさえあれば、多くの企業はすぐ動き出せる可能性がある。外部研修やリスキリングの提供を、地域全体で考える必要がありますね。
MA
同感。DX推進は技術導入よりも「人づくり」の比重が大きい。スキルが追いつかなければ、AIやデジタルツールも宝の持ち腐れだ。
かわもと部長
営業の立場からすると、人材育成を「投資」でなく「コスト」と見る経営層がまだ多い。でも本当に必要なのは「育成こそ最大の投資」という認識ですね。
真弓課長
今回の調査が、その鏡になってくれるといいですね。必要性を理解しつつ、人材不足を理由に止まってしまう。これは大きなジレンマ。でも、ここを突破できれば一気に進む可能性もあります。
MA
これまでも関心は高まっているのに行動が伴わない。このギャップをどう埋めるかが次の課題だね。
かわもと部長
DXは部署や担当者任せではなく、会社全体で挑戦する流れを作らないと。流れが広がれば、採用や教育の仕組みも自然に整っていくはずです。
真弓課長
実際、うちの部門でもリスキリングを試験的にやってみたら、若手だけでなくベテラン社員も積極的に参加してくれた。「学び直し」のニーズは強いですね。
MA
いい傾向だ。DXは世代を超えた学び直しの場になれる。テクノロジーをきっかけに会社全体で知識を共有し、挑戦できる文化を作れるかどうか。そこに秋田企業の未来がかかっていると思う。
真弓課長
以前話しましたが、DXと単なるデジタル化の違いが理解されにくい背景には、「課題が見えていない」ことがある。そのために「今のままでもいいのでは」という、ある種の満足感が広がっているんですよね。
かわもと部長
ただ最近は、DXや生成AIを具体的に動かす企業も出てきている。今回の調査でその傾向が表れていればいいですね。
真弓課長
おー!夏休み明けでも、やる気が出てくるのがこの調査結果のリリースですね。頑張りましょう。

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(※注1)一般社団法人秋田デジタル利活用推進協会(デジ活あきた)で実施している「第6回秋田県内におけるIT/DXの導入実態に関する調査」。
     弊社は同協会の事務局を担当しております。MAは同協会で調査結果分析と取りまとめを主導しています。

(※注2)「第6回秋田県内におけるIT/DXの導入実態に関する調査」の結果は2025年8月20日同協会のホームページでニュースリリースが公開されました。
     ▶https://rpa-akita.jp/notice/info_20250820/

---編集後記---

真弓課長
今回のメルマガの話題は、弊社が事務局を務める「デジ活あきた」で実施した「第6回秋田県内におけるIT/DXの導入実態に関する調査」に関する話題をお届けしました。
経年で秋田県内企業のIT/DX実態調査を続けてまいりましたが、多くの企業や団体の皆さまにご協力いただき、今回も無事に終了することができました。この場をお借りして、事務局よりご協力いただいた秋田県内の企業・団体の皆さまに心より御礼申し上げます。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

営業スタッフ徒然草

TikTok Shopはじまりました

こんにちは。DXソリューション部 営業担当の最上です。
まだまだ残暑が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。夜は少しずつ涼しくなってまいりましたので、体調管理には十分ご留意ください。

さて、まもなく9月を迎えますが、去る6月30日、日本でも「TikTok Shop」が本格的に始動しました。
これまでの消費行動は、欲しいものをイメージし、検索し、比較・検討したうえで納得して購入する。この一連の流れは「AIDMAモデル」としてマーケティングの教科書にも登場する定番の購買プロセスでした。
しかし、世界の消費行動は確実に変革を遂げており、その最新形態のひとつがTikTok Shopではないかと感じています

TikTok Shopは、ショート動画やライブ配信を通じて商品を紹介し、アプリ内で購入まで完結できるECプラットフォームです。すでに北米や東南アジアでは爆発的な成長を遂げており、2024年時点での世界流通総額は約332億ドル(約5兆円)、2025年には約1860億ドル(約27兆円)に達するとの予測もあります。
(出典:Bloomberg、Business of Apps、2024年報道)
これは、米メタ(旧Facebook)のEC関連売上に匹敵する規模であり、もはやSNSの枠を超えた「動画型コマース」の主役としての地位を確立しつつあります。

参考までに、日本の小売大手の2025年予測売上は、イオンが約8.39兆円、セブン&アイHDが約6.03兆円、ファーストリテイリング(ユニクロ)が約2.13兆円、ドン・キホーテHD(PPIH)が約9415億円とされています。
(出典:『激流』2025年2月号「流通業界2025年全予測」)
TikTok Shopのグローバル規模は、これらを凌駕する勢いであり、日本市場でも同様の成長が期待されます。

<AIDMAモデルの限界と、TikTok的購買体験の浸透>

従来の購買モデル「AIDMA」は、Attention(注意)→ Interest(興味)→ Desire(欲求)→Memory(記憶)→ Action(行動)という5段階の心理プロセスを前提としています。テレビCMや店頭POPで注意を引き、興味を持たせ、欲求を喚起し、記憶に残し、最終的に購入へと導く、この流れは長らく購買行動の定石とされてきました。

近年では、検索や比較、共感、拡散といったプロセスも重視されるようになり、AISASやSIPSなどのモデルも登場していますが、TikTok Shopではこれらのプロセスが大きく省略されます。

ユーザーは縦型動画を視聴している最中に、アルゴリズムによって偶然的に商品と出会い、ストーリーや使用感に共感し、ワンタップで購入が完了する。AIDMAの「Memory」フェーズがほぼ省略され、感情と行動が直結する構造です。比較や共感のフェーズも、アルゴリズムが事前にユーザーの嗜好に寄せて最適化しているため、意識的な検討をせずに購入してしまうという寸法です。
無理やり日本語的ネーミングをすると「中華版短編縦型ジャパ〇〇〇 アルゴ付き」とかになるでしょうか・・・・〇〇〇はご想像下さい。

このような購買体験の変化は、まさにECにおける「トランスフォーメーション(構造的変革)」と呼ぶにふさわしいものではないでしょうか。従来のマーケティング理論や購買モデルだけでは捉えきれない、新しい消費のかたちが私たちの生活に急速に浸透しています。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

このコラムを、商品提供者の視点でご覧になりましたか?それとも消費者視点でしたでしょうか?また、私は何を皆様に伝えたかったでしょうか?ぜひ皆様のご意見もお聞かせいただければ幸いです。


<問い合わせ先>
エイデイケイ富士システム(株)
DXセンター DX担当までお申し付けください。
TEL:018-838-1173

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