DX実現事例の紹介

DX実現事例の紹介

2024/09/04

DXリーディングカンパニーを訪ねて 5回目

株式会社秋田中央機工

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「仮設足場施工管理システムSiteEye」で見えた未来!
従来のやり方を守りつつ進めたDXで業務効率化を実現

秋田県潟上市に本社を置く株式会社秋田中央機工は、建設機械のレンタル業務と仮設足場施工リースを主力とする建設会社だ。秋田の他に首都圏にもいくつかの拠点を持ち、幅広い事業を展開している。

IT人材不足や業界文化などの問題で、デジタル技術の活用による業務改革が難しいと言われている建設業界。そんな中、同社はどのようにDXを推進し、業務の効率化を進めてきたのだろうか。今回はそんな同社の取り組みについてご紹介する。

建設機械と仮設足場のリーディングカンパニー

秋田中央機工の主要な事業は、建設機械レンタル業と仮設足場施工リース業の大きく2つ。その他にも、建設機械の販売および修理・自動車レンタル業や、総合構造物解体業・土木工事全般など、多岐に渡り事業を展開している。

1979年の創業当初から現在まで引き継がれている建設機械レンタル業は、今年で45年目。地域密着型の建設機械器具総合レンタル企業として、潟上市で着実に業績を上げてきた同社だが、なかなか業績が伸びずに悩んだ時期もあったそうだ。

そこで、平成11年に新規事業として目をつけたのが、当時そこまでメジャーではなかった住宅メインの仮設足場施工リース業。住宅や中高層の建物をはじめ、橋梁工事などの特殊な工事などの仮設足場を、設計・施工・資材の管理まですべてを担う。現在はメイン事業である建設機械レンタル業と同等の売り上げにまで成長を遂げ、会社の主力事業として展開している。将来的にはさらなる成長が見込まれているのだそうだ。

秋田中央機工では、技能実習生も積極的に受け入れている。現在同社では30数名の技能実習生が活躍しており、業務の一翼を担う。国際的なチーム構築も、同社の数あるポジティブな面のうちの一つと言えるだろう。

ホワイトボードがそのままスマホへ。エイデイケイ富士システムと共に開発した「仮設足場施工管理システムSiteEye」

そんな秋田中央機工でIT化への意識が高まったきっかけの一つは、夕方になるとかかってくる大量の電話だ。多くの建設会社同様、同社でも施工管理はホワイトボードでの管理がメイン。業務を進めるために、本社事業所内にあるホワイトボードを逐一確認しなければ、仕事が進まないのである。その電話対応に多くの時間を割かれてしまっていた。

そんな状況で声を上げたのが、同社の専務取締役である三浦義之氏。「情報共有や工程管理に多くの時間がかかり、現場の効率が低下してしまっているのを感じました。これをデジタル化で改善し、よりスムーズな情報共有と効率的な工程管理を実現したかったんです。」と三浦氏は言う。


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秋田中央機工専務取締役三浦義之氏


ある意味、トップダウンでデジタル化導入を決めたというが、その後の打ち合わせには三浦氏は一切関わっていない。システムを実際に使うであろう拠点長たちに全てを任せたのだという。社員達に対する信頼が見て取れる。

「従来のやり方をなるべく変えずにデジタル化する」そこはどうしても譲れないポイントだった。そしてそこに柔軟に対応したエイデイケイ富士システムとタッグを組み、システム開発を進めることとなった。「やりたいこと、実現したいことを詳細に聞いてくれて、システムに落とし込んでくれた。いわゆるわがままを一番聞いてくれたことが決め手でしたね」と、仮設部課長代理を勤める鈴木晃氏は話す。

そして完成したのが「仮設足場施工管理システム SiteEye」だ。既にある建設業向けクラウドサービスSiteEyeを専用カスタマイズし、現場の計画から実績までを一括で管理できるシステムとして開発された。仮設足場業界においてまだまだ主流であるホワイトボードとマグネットの管理方法を大きく変えることなく、そっくりそのままデジタルに移行させたシステムだ。請求処理や売り上げ処理まで紐づいている。タイミングよく募集していた「中小企業等稼げる力創出補助金」も活用し、2024年の春から実際に運用に至っている。


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混乱がないよう、以前使用していたマグネットの色もなるべくリンクさせている


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建設業界では一般的なホワイトボード管理の例

「スマホのボタンひとつで」大きく向上した業務効率

実装から数ヶ月経つが、実際の使い心地はどうだろうか。使ってみて感じたメリットがいくつかあるというので紹介したい。

まずは、情報共有のしやすさが格段にアップしたことだ。「仮設足場施工管理システムSiteEye」は、個人のスマートフォンやiPadですべての作業管理確認ができるシステム。スマホを見ればリアルタイムでの状況確認が可能なので、必然的に電話のやりとりは大幅に減った。管理者や他の関係者もすぐに状況を把握することができるため、以前よりも現場の状況に興味を示すことが多くなったという。 

現場の運営もスムーズになった。「うちはグループ会社合わせて6拠点あるのですが、複数拠点の業務状況がボタン1つで簡単に分かるようになりました。今まで情報共有や工程管理にかかっていた時間が減り、業務効率が大きく向上しました。」と鈴木氏は言う。


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秋田中央機工仮設部課長代理鈴木晃氏

応援要請なども効果的に行えるようになった。従来のホワイトボード運用では出来なかった、未来の日付への人員配置が実現したことから、前もって人員配置をすることが可能になった。プロジェクト全体を俯瞰して確認できるため、例えば前日に急な変更があっても迅速に調整することができる。機会損失の削減にも繋がったのである。

そして、ペーパーレス化が進んだ。「仮設足場施工管理システムSiteEye」では、地図や写真なども共有することができる。場所を入力すればGoogle Mapで位置を確認することもできる。従来、紙を使ってやりとりしていたものの多くが必要なくなった。SDGsにも貢献する重要なポイントだ。

メリットばかりに思えるが、同社にとっては初めてのデジタルシステムの実装。実装時に混乱等はなかったのだろうか。実はそこにも、「従来のやり方をなるべく変えずにデジタル化した」ことが功をなしている。システムに慣れるまで定期的にサポートを実施したりもしたようだが、"手書きのものがそのままデジタルの打ち込みになった"ように、ほとんど混乱は見られなかったのだという。



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むしろシステムを使わないと「なぜSiteEyeを使っていないのか」と尋ねられることもあるらしい。それほどまでに「仮設足場施工管理システムSiteEye」は社内にすんなりと受け入れられ、確実に業務効率向上に繋がったのだ。

更なる業務効率化を目指す

秋田中央機工のDX推進は、今後はどのように進んでいくのだろうか。

「仮設足場施工管理システムSiteEye」は、今後さらにアップデートを目指しており、今後の展望は具体的に見えている。特に詳細な使用状況や現場の図面共有を追加でシステムに統合していきたいと、鈴木氏は期待を膨らませる。

実は、会社のもう一つのメイン事業である建設機械のレンタル業務にもDXの計画を持っている。なるべく早期のシステム導入を計画しているのだ。「本来は、建設機械レンタル業務の方を優先的に進めたかったんです。しかしプロジェクトの規模が大きく、構造も複雑で時間がかかる。グループ会社との調整も必要で、これらを連携させるシステムを全体的に見直さなければいけないですね。」と語るのは三浦氏。会社のほとんどの業務がDX化する日もそう遠くはないだろう。

秋田中央機工のDX推進はここで終わらない。今回、仮設足場施工管理システムでDX推進の基盤作りをしたことで、より明確に未来が見えてきているようだ。今後もデジタル化で更なる業務効率化を目指していく。

今回の秋田中央機工のDX推進例は「従来のやり方をなるべく変えずにデジタル化した」ことがポイントの一つではないだろうか。一見すると保守的なようにも見えるが、業界のデジタル化の問題点を確実に捉え、それを上手く工夫して昇華させている。今回の事例が、建設業界におけるDX推進の一つのヒントとなることを大いに期待したい。


編集・監修:創生する未来編集部 執筆・グラフィックレコーディング:中野友香

企業プロフィール

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社名

株式会社秋田中央機工

代表取締役

三浦 正義

住所

秋田県潟上市天王字棒沼台282

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