2025/12/11

【No.131】秋田に迫る「2030年の複合崖」

※MA:マーケティングアドバイザー かわもと部長:次代のホープとされる今風の営業部長
真弓課長:企画部のやり手マネージャー兼SE

---「今回の会話のポイント」---

「2030年問題」と呼ばれる人材不足や基盤老朽化は全国の課題だが、地方ではすでに前倒しで現実化しています。今回は年末のメルマガとして、流行語ではなく本質に立ち返ることを意図しました。MA自身が煽り言葉をビジネス的に使う風潮に疑問を持っており、その視点から「崖」という言葉の意味と課題の真相を整理しています。
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MA
「2030年問題」も「AIで全部変わる」も、年の瀬になると特に言葉が踊るよね。でも、年末のメルマガくらいは、流行語に流されず、ちゃんと地に足をつけて振り返りたいと思ったんだ。自分は昔から「危機を煽って注意を引くやり方」に違和感があってさ。地域の現場で働いている人は、そういう言葉の波と無関係に、毎日目の前の課題に向き合っているんだよね。
かわもと部長
確かに「2025年の崖」も散々言われましたけど、今はもう誰も振り返らないですよね。あれだけ大騒ぎしたのに、総括も検証もない。
真弓課長
言葉の熱気だけが残って、現場だけが疲弊しますね。地方はその波を受け止める余裕が少ないですから。
MA
だから、秋田ではなおさら腰を据えた議論が必要なんだよ。煽りの大小じゃなく、実際に起きている変化を正面から受け止めないと。
真弓課長
私も「崖」という表現はあまり好きじゃないです。でも、なぜ使われるのかは理解しておくべきだと思ってます。
MA
崖というのは、「ゆっくり悪化していた問題が、ある時点で急に深刻化する」「引き返せない段階に入る」「対策には時間が必要なのに、危機は一気に訪れる」、そうした特性を端的に示す比喩だと思う。人材不足も基盤の老朽化も、静かに進行していて、あるとき限界に達する。その見えにくさが、地方ではより深刻なんだろうね。とはいえ、この「上からの煽り」のような使われ方は好きじゃない。
かわもと部長
なるほど。だからこそ、あえて使われる言葉なんですね。ただ、そのぶん誤解も生まれますね。
MA
そう。言葉は便利だけど、説明が省かれすぎてしまう。地方は全国より進行が早い分、こうした言葉の乱用に振り回されやすいんだよ。でも、全国で語られている「2030年の複合崖」は、地方ではすでに現実になりつつある。残念ながらね。
かわもと部長
そうですね。「複合崖」という考え方は、秋田だとすごく腹落ちします。
MA
首都圏では「2030年にIT人材不足がピーク」と言われているけれど、地方は5年ほど早い。人材、基盤、外部依存、若者との接点、これらは単独ではなく、連動して悪化していく。だから「複合」なんだ。
真弓課長
派手な言葉が、かえって本質を隠してしまうのですね。問題は土台そのものの弱さだということですね。
MA
そう。だからこそ、煽らず淡々と見つめる必要がある。ただ、ひねくれているようだけれど、今回はあえて「崖」と言われる4つを整理してみたい。
まずは「人材の崖」だね。
かわもと部長
はは、あえて「崖」論法で行くわけですね。
MA
まあね。国内企業の9割以上を占める中小企業では、IT担当者がせいぜい1名、いわゆる「ひとり情シス」が多い。しかも多くは兼任だ。
かわもと部長
DX以前に、基本的な作業を担える人すらいないかもしれない状況になってきています。
MA
さらに地方では、PC更新やネット環境整備、セキュリティ対策が後回しになりやすい。これがいわゆる「基盤の崖」だね。
真弓課長
理想論だけを語っていると、現場との距離がどんどん開いてしまいますね。
MA
そして全国的にシステムベンダー不足が進む一方で、地方は「社内に人が足りない」「外部相談者が身近にいない、捕まらない」という二重苦に陥る。これが「外部依存の崖」だ。
かわもと部長
しかも、外部の担当者が退職しても後任が来ない事例は確かに増えているかもしれません。弊社は違いますが(笑)。
真弓課長
全国に出る初期症状が、地方で最初に現れるということですね。なるほど。
かわもと部長
では、4つ目は何でしょうか?
MA
まさに「若者消滅の崖」だね。これは全国的な課題だけど、地方では特に深刻だ。学生と企業が出会う機会が本当に少ない。そこへ首都圏企業が積極的にイベントを仕掛けてくるからね。
真弓課長
若者がいなければITも更新できないし、人材も育たない。若者と企業の距離が開いているけれど、地方はさらに深刻ですね。
かわもと部長
若者との接点づくりは、地方DXの土台だと思います。
真弓課長
よくわかりました。でも、IT/DX関連では煽り言葉、いわゆるバズワードがどうして生まれて、どうして忘れられてしまうのでしょうか?
MA
理由は3つあるね。
①言葉のほうがイメージしやすい(と感じさせる)
②メディアやビジネス関係者が注目を集めたい
③外れても誰も責任を取らない。
この「無責任な連鎖」が、煽りを生む。これこそ、いわゆるマッチポンプ型ビジネスの典型だよ。
真弓課長
地方は、その波に付き合うだけの体力があるわけじゃありませんしね。
MA
だからこそ、バズワードではなく「地域の現実」を見つめなきゃいけない。必要なのは「煽らないDX」だよ。地方で必要なのは派手な後追いじゃない。地に足のついた取り組みだ。「基盤を静かに更新する」のはもちろん、「外部と継続的につながる」「若者との接点を仕組みでつくる」、そして『あきたDX通信』のような情報発信やマーケティング活動がとても重要だ。どれも地味だけれど、確実に効く。
かわもと部長
響きの良さより、実際に現場が前に進むことが大事ですね。
真弓課長
確かに、地方では強い言葉ほど反発を生んでしまう印象があります。身近な言葉で、丁寧に進めることの必要性を実感します。
MA
その通り。「あおらず、寄り添い、静かに前へ」。これこそ地方DXの正しい道だよ。来年は「煽りゼロで進める基盤DXのすすめ」をやろう。まずは、人材を活かすための小さな改善から始めていこう。
かわもと部長
現場が助かる実務的な内容に期待しています。
真弓課長
静かに、着実に積み上げていきましょう!

---編集後記---

真弓課長
秋田では、全国より早く課題が形として現れます。そして、今年最後の月にこのテーマを取り上げた理由は、私たち自身が来年に向けて腹を据え、進むべき方向を足元から確かめるためでもあります。流行語に振り回されることなく、身近で必要とする人や企業に対して、IT基盤を丁寧に支える、それこそが地域DXの中心であり、未来への確かな投資だと改めて感じています。強い言葉は一時的な熱を生みますが、地域を前に進めるのは、静かな積み上げなのだと本当に思います。

営業スタッフ徒然草

DX人材不足をどう乗り越えるか?

みなさん、こんにちは。相原です。
2025年も残すところ、あと12月のみとなりました。秋田市では先日、今シーズン初めて雪が降り、『あぁ、この季節が来たか』と冬の訪れを実感しました。ただ、その雪もすぐに融け、今は少し寒さが和らいでいます。雪が少なく、穏やかな冬であってほしいと願うばかりです。

今年を振り返ると、DXという言葉を耳にする機会がますます増えました。その中で『DX人材』というと、特別なスキルや高度な知識が必要なイメージを持たれる方も多いと思います。
しかし、私はそうではないと感じています。むしろ、自分の仕事が好きで、今よりもっと良くしたい、改善したいという思いを持っている人こそ、DXに向いているのではないでしょうか。

DXは決して大きなプロジェクトから始める必要はありません。むしろ、小さな改善を積み重ねることが大切です。まずは一歩を踏み出すこと、その行動が未来を変える力になります。
そんな思いを込めて、今回のコラムでは『DX人材不足をどう乗り越えるか?』について考えてみたいと思います。

【なぜDX人材不足が課題なのか】
全国的にDX推進が進む中、地方企業では人口減少や採用難が重なり、専門人材の確保が難しい状況です。では、どうすればこの壁を乗り越えられるのでしょうか?

・解決策の第一歩は"社内育成"
新しい人材を採用するのが難しいなら、既存社員を育てることが有効です。最近では、オンライン研修やeラーニングで学べる環境が整っています。小さな改善から始めることで、社員の「DXマインド」を育てることができます。

弊社でも、社内育成に力を入れています。具体的には、AI関連資格やIPA試験の取得支援、さらにDX研修やAI研修の受講機会の提供を通じて、社員が自ら学び、業務改善に活かせるスキルを身につける取り組みを進めています。


・外部パートナーを活用する
すべてを自社で抱え込む必要はありません。システムベンダーやコンサルティング企業と協力し、専門知識を補うことで、DXをスムーズに進められます。クラウドサービスやノーコードツールを使えば、専門人材がいなくても業務改善が可能です。最近では、生成AIやRPAを活用した業務効率化も注目されています。

・秋田ならではの取り組み
秋田県では、DX人材不足を補うために地域独自の取り組みが進んでいます。秋田県庁ではソフトバンクと連携し、職員向けに「デジタル化リーダー育成研修」を実施。RPAやAI、ChatGPTの活用を学び、行政サービスの効率化に取り組んでいます。

さらに、前回のコラムでもお伝えしましたが、事例の1つ目に弊社で行ったセミナーを上げさせていただきました。 秋田県産業労働部と連携して開催した「事業者様向け生成AI活用セミナー」です。このセミナーでは、参加者が「まずは体験」からDXに踏み出せる内容となっておりました。
こうした取り組みは、「DX人材=特別なスキルを持つ人」というイメージを変え、自分の仕事をもっと良くしたいという思いを持つ人こそDXの担い手になれるというメッセージを伝えるものです。


【まとめ】
DX人材不足は確かに大きな課題ですが、「人材がいないからDXはできない」という時代ではありません。社内育成、外部連携、デジタルツールの活用など、できることはたくさんあります。
小さな一歩から始めて、DXを企業の未来につなげていきましょう。


<DXに関するお問い合わせ>
 エイデイケイ富士システム株式会社
 DXセンター DX担当まで
 Email:dx-lab@adf.co.jp

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あきたDX通信>>>>> 編集長 伊嶋謙二 /// 編集スタッフ 伊藤真弓 澤田亜弓 /// 主幹:五十嵐健 /// エイデイケイ富士システム株式会社

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