DX実現事例の紹介

DX実現事例の紹介

DXリーディングカンパニーを訪ねて 1回目

秋田県湯沢市 株式会社 和賀組

地方の中小企業から生まれた建設DX~出面(でづら)管理システムと工事原価管理サービスで、大幅な業務効率化に成功!

秋田・湯沢市に本社を構える和賀組は、明治10年に創業し、2027年には創業150周年を迎える歴史のある土木・建設の老舗企業だ。秋田市で設立された橋梁社の岩崎支社として、木橋を架橋したことから事業が始まった。その後、時代の要請で土木や建築請負業へと進み、大正・昭和の初めまで木造校舎や橋梁建設、さらには木造船の建造を行っていた。現在は土木・建築・舗装・鉄道工事・地盤事業・戸建住宅といった6つの事業を柱に展開しており、ドイツの企業が開発した先進的なコンクリート補修技術なども導入し、県外への橋梁補修も積極的に参入している。第1回目の本連載では、地方企業の同社がいかにDX化を進めてきたのか、その取り組みを中心にお伝えする。

和賀組のデジタル化へのポイント!

Beforeアナログで手配していた人材配置
After業界特有の「出面(でづら)管理システム」をエイデイケイ富士システムと開発(のちに同社のSiteEyeシリーズに組み込まれる)
Before原価計算の仕組みを「Microsoft Access」で自前構築
Afterエイデイケイ富士システムの「SiteEyeシリーズ」(工事原価管理サービス)で標準化と自動化を推進
Before現場での負担が大きかった地盤調査
After「Geoweb System」によって、手看板や記録メディアをなくし、調査データをクラウドにアップすることで、作業工数の削減に成功

業界で初めて出面管理システムをエイデイケイ富士システムと共に開発!

冒頭のとおり和賀組は大変歴史のある企業だが、IT化という点では以前より「Microsoft Access」を使って、原価計算の仕組みを自前で開発してきたという。当時、優秀な社員が一人で作りこんできたのだが、税理士に「あまりにも属人的なので、改善したほうが良い」というアドバイスを受けた。そこで誰でも使えるようなシステムを導入することになり、秋田のエイディケイ富士システムに相談したそうだ。

ただし、和賀組では原価計算システムの課題を解決する前に、もう1つ業界特有の大きな課題を抱えていた。同社では、建設・土木の仕事の範囲が、秋田県内だけでなく、青森県から宮城県まで広地域をカバーしている。そのため、全体の作業の進行状況を把握して、現場の人員配置を毎日どのように最適化するかという人員配置システム、業界用語では出面(でづら)管理が必要だった。

「これまでは、現場に人材を無理・無駄なく配置するために、責任者が毎朝早く現場に出向き、状況を把握して現場の段取りを決めていく必要がありました。しかし、これは大変負担が掛かる作業でした。そこで以前から、こういった人材配置システムがないかと探していたのですが、我々の業界では見つかりませんでした。そこでエイデイケイ富士システムに一から開発してもらったのです」と振り返るのは、和賀組 代表取締役 和賀幸雄氏だ。

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この出面管理システムは、簡単にいうとアルバイトのシフト管理システムのようなイメージだが、建設・土木関連では現場や仕事の内容が非常に多岐にわたるため、管理すべき項目と変数が多くなり、多次元的なマトリクスになるため、より複雑な構成になる。

「現場監督は、誰もが自分の現場の作業員を工期中に手放したくないという心理が働きます。明日は暇だけれど、明後日は忙しいので、とりあえず明日の人員も確保したいと思っています。しかし、それを認めると1つの現場に人材がずっと固定されてしまい、会社の中に複数の会社ができてしまうのです。本当に効率を考えるのであれば、工程ごとに求められる人材と建機を含めた効果的なスケジューリングが重要になります」と和賀氏は強調する。

和賀組の依頼を受けて、エイデイケイ富士システムが開発した本システムは2020年1月に導入された。これが、のちに中小建設業向け働き方改革・DX支援統合プラットホーム「SiteEyeシリーズ」の構成要素の1つ「出面管理サービス」として商品化された。現在、SiteEyeシリーズには、「ヒト」を管理する出面管理サービスと、「カネ」を管理する工事原価管理サービス、「モノ」を中心とする機材管理サービスなどのラインアップが揃っている。

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出面管理サービス

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SiteEyeシリーズ

和賀組では、こういったヒトの配置やモノの管理ができてこそ、生産性を向上させるためのお膳立てが整うと考えた。そして次ステップとして、本格的なDXの導入を進めることになった。

属人的なシステムを標準化すべく、SiteEyeシリーズ(工事原価管理サービス)を導入

和賀組が依頼して完成した出面管理システムは大きな成果を上げたが、次に同社がDX化として手を付けたのが、以前より懸案事項であった工事原価管理システムだった。冒頭のように、これまでの原価管理業務は、Microsoft Accessで作りこんだ自前システムを利用してきたが、それでは属人的すぎるとの指摘を受けた。担当者の休業などもあり、若手人材の育成や業務の引継ぎがスムーズに行えるように、誰もが利用できる標準化されたシステムが求められていた。

また従来までは請求書も紙ベースで集計していたため、どうしても業務が非効率になりがちだ。現場監督は事務処理のために、現場の仕事が終わってから、また会社に戻らなければならない。会社と現場を相互に行き来するため、全社的にも負担となっていたのだ。

「本社に送られてくる請求書は、たまに他社の会社のものが混ざっていることがあるため、現場監督が1枚ずつチェックしなければなりませんでした。そこの手間も含めて自動化したいという思いもありました」(和賀氏)。

そこで2020年9月から、同社ではエイデイケイ富士システムのSiteEyeシリーズ、工事原価管理サービスを導入することになった。このサービスは、業者側がクラウドを利用してダイレクトに支払いの請求書データを入力し、和賀組の経理に送ってもらうという仕組みだ。これにより、現場監督もいちいち本社に戻って書類をチェックする必要がなくなり、総務関係者の事務処理の工数も大幅に削減されるようになる。データが自動集計されることで、支払いの迅速化も見込めるため、現在サービスの定着を進めているところだ。

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「このサービスを業者さんに利用してもらうためには、まず現場監督が自分でサービスを使いこなせるようなスキルを身につける必要があります。それができてから業者さんに指導することになるため、それなりの人材教育も必要になると思います」と和賀氏は説明する。

「Geoweb System」の導入で、現場の地盤調査なども簡便化し、本格的なDX化へ

また同社では、前出の出面管理や工事原価管理に関する社内業務の改革と並行しながら、現場作業についてのDX化も推進しているそうだ。その一例が地盤事業におけるDX化への取り組みだ。たとえば「Geoweb System×GeoWeb LD」を導入することで、業務の作業効率を大幅に改善することに成功したという。

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「これまで地盤を調査するためには、地盤調査機、現場写真を撮るデジタルカメラ、その撮影時に必要な手看板、調査データを保存してPCに展開する記録メディア(コンパクトフラッシュ)が必要でした。それがGeoweb Systemにより、タブレットと地盤調査機だけで済むようになりました。現場での調査後に、データの施工写真をポケットWiFiでWebにアップロードし、PCからリアルタイムにアクセスしたり、県外から報告書を作成したりすることで、効率化が進みました」(和賀氏)。

このように和賀社長のトップダウンの方針によりDX化に成功した同社だが、今後は他の会計・給与・勤怠システムについても改善を加えていく意向だ。現在、会計システムには「弥生会計」、給与システムには「給与奉行」を利用しているが、これらのデータを工事原価管理システムと連携している最中だ。将来的にはERPのような統合管理システムへの移行も十分に考えられるだろう。

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ほかにも同社ではグループウェアとして「desknet's NEO」を導入し、工程・文書・写真を管理しているが、社員への各種通知のためのコミュニケーション系チャットツール「LINE WORKS」も強力な武器になっているという。

和賀組は、これら一連のIT化やDX化によって、業務の改善や生産性の向上に成功した。まだ具体的な効果の数値は出せないものの、時間外労働が削減され、休日も増やせるようになった。実際に昨年より完全土日週休二日制を実現しており、残業もほとんどなくなったという。また社員の健康にも十分に配慮しており、同社は2021年の健康経営優良法人にも選ばれている。

そうなると、和賀組に入社したいという地元の優秀な人材も増え、就職先として人気も爆上がりしているそうだ。さらに、その人気を支える広報活動もしっかりと実施している点も見逃せない。和賀組では、数年前からYoutubeを活用した番組を内部で制作して配信中だ。「わがぐみch」では、同社の日常や、さまざまな現場、女性社員の活躍など、テレビのバラエティ番組のような形で親しみやすく紹介しているため、地元の若い人達を中心に人気を博しているという。

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和賀組は、DX化を推進するにあたり、まずエイデイケイ富士システムの協力のもと、ヒトの配置やモノの管理を進め、そのうえで一歩進んだDX化を推進しようとしたわけだ。同社の取り組みは、現在DX化に戸惑っていたり、どこから手をつけていけば分かないという地方の中小・中堅企業に向けた代表的なベストプラクティスになるだろう(了)。

編集・監修:創生する未来編集部 執筆:井上猛雄

企業プロフィール

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社名

株式会社 和賀組

資本金

2,000万円

従業員数

70名(男性63名、女性7名)

事務所

●本社
〒012-0826 湯沢市柳町2丁目2番40号
Tel:0183-73-5107 Fax:0183-73-8788

●機材センター
〒012-0801 秋田県湯沢市岩崎字南一条68-1

●第二機材センター
〒012-0802 秋田県湯沢市成沢字中堤6-1

代表者

代表取締役 和賀幸雄

事業内容

総合建設業
秋田県知事許可(特-28)第1900号
建設業の種類(土木工事業、建築工事業、ほ装工事業・他18工事業)

株式会社和賀組一級建築士事務所 (一級建築士3名)
秋田県知事登録 第15-10A-0138号
秋田県格付等級
一般土木工事、法面工事、建築一式工事、ほ装工事、いずれもA級

宅地建物取引業
秋田県知事免許(4)第1921号

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